科学と社会の接点を読む(2025年11月第4週版):原発再稼働、AI基本計画、研究公正とキャリア
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1️⃣ 柏崎刈羽・泊原発など再稼働ラッシュ──「国策民営」の限界があらわに
柏崎刈羽原発について新潟県知事が再稼働容認に傾き、北海道知事も泊原発3号機再稼働容認の方針を表明しました。同時に、東電の秘密文書管理不備や試験記録不正といった問題も報じられており、「国策民営」モデルの限界と、事業者の適格性が改めて問われています。
2️⃣ 日本版DOGE設置へ──「政策効果の低い事業見直し」を誰がどう判断するのか
政府は、政策効果の低い事業を見直す「日本版DOGE」の設置を発表しました。税制やIT政策など幅広い分野の“ムダ”を削る狙いですが、どの指標で「効果が低い」と判定するのか、科学技術・教育・基礎研究がどのように扱われるのかが大きな論点になります。
3️⃣ 国立大への資金投入、メリハリか基盤強化か──文科省と財務省の綱引き
国立大学への資金投入をめぐり、文科省は「基盤的経費の強化」を、財務省は「選択と集中によるメリハリ投資」を主張し、方針の違いが鮮明になっています。老朽化した施設や研究時間の不足といった現場の課題にどう応えるのか、日本の研究力の将来を左右する重要な論点になっています。
以下の記事で掘り下げました。
4️⃣ 「基礎科学の再興」へ──文科省有識者会議が提言案を公表、危機感にじむ再建ロードマップ
文部科学省の有識者会議は「科学の再興」に向けた提言を発表しました。案だったときに記事を書いています。
基礎科学の衰退、若手研究者の流出、外部資金偏重による研究の短期化など、長年指摘されてきた構造的課題を示し、研究時間確保・安定的な基盤的経費投入・文理横断の学び直しの促進などを盛り込みました。第7期科学技術イノベーション基本計画への反映が焦点となり、日本の研究力回復に向けた実効性が問われます。
なお、メルマガ本誌発行後に行われた総合科学技術・イノベーション会議の資料のなかにこの提言が取り上げられています。
5️⃣ 研究公正:AI生成要旨が研究公正会議を“ジャック”
この件はNatureも報じています。榎木個人のnoteで記事にしています。
研究公正を扱う会議に、多数のAI生成要旨が紛れ込み、プログラム編成に支障が出たと報じられました。研究評価や査読の現場で、AIをどう扱うかという課題が現実問題として表面化しています。
なお、その後この会議の査読者の情報が流出するというスキャンダルが発生しています。
6️⃣ 東大病院准教授の逮捕と東大トップメッセージ──寄付金をめぐる倫理と信頼回復
東京大学医学部附属病院の准教授が寄付金をめぐる収賄容疑で逮捕され、大学として総長メッセージを公表しました。医学部、附属病院の改革などにも触れています。卓越大学認定直前というタイミングでの不祥事であり、研究・医療機関としての倫理と信頼回復のあり方が問われています。
東大は各部局の力が強く、いわば独立国のようになっています。こうした状況を改善できるのか、それとも対処しています、というポーズに終わってしまうのか…。
7️⃣ 国立国会図書館の大規模個人情報漏えい──研究インフラのサイバー脆弱性
国立国会図書館の新システム再委託先が不正アクセスを受け、4万件超の個人情報が漏えいした可能性があると報じられました。研究者・利用者の情報を扱う機関として、サイバーセキュリティ対策の強化が不可欠です。
8️⃣ 「ゲノム医療施策に関する基本的な計画」公表──がん・希少疾患治療の新インフラ
国はゲノム解析を活用した個別化医療を推進するための基本計画を公表しました。がん・希少疾患などに対し、遺伝情報に基づく最適治療を普及させる狙いがありますが、個人情報保護・費用負担・地域格差など多くの課題も残されています。
9️⃣ 未承認「再生医療」の事故が相次ぐ──自由診療の“グレーゾーン”
自由診療で未承認の再生医療を提供するクリニックで事故が起き、安全性への懸念が高まっています。規制の網をすり抜けるビジネスモデルに対し、どこまで公的介入すべきかという難しい政策課題です。
🔟 AIと雇用:スタンフォード大の大規模データが示す「若者キャリア」の揺らぎ
スタンフォード大学などの分析により、AI導入が若年層の雇用構造を変えつつあることが示されました。初級職・ホワイトカラー職の業務内容が再設計される中で、「どのスキルを伸ばすべきか」というキャリア形成上の問いが一層切実になっています。