科学と社会の接点を読む〜2025年12月第3週版国際卓越大認定、中国の研究優位

今週は「研究開発投資の伸び悩み」と「選択と集中の次の一手」が焦点です。研究開発減税(最大50%)など産業支援が前に出る一方、大学現場では入試早期化、学費・留学生授業料、 デュアルニュース研究助成の扱いなど、制度と価値観がせめぎ合っています。海外は米国の助成審査の揺れ、中国の研究優位、AI統治の主導権争いが目立ちます。
榎木英介(カセイケン代表) 2025.12.21
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 メルマガからの20本ピックアップは以下です。無料10本、有料10本ですが、実は第3週で最も大きなニュースは、国際卓越大の認定です。メルマガには取り上げませんでしたが、これを最初にあげます。

無料版(10本)

1) 国際卓越大に東京科学大認定される

  東京科学大が認定、京大が候補、東大は継続審査となりました。

 週刊メルマガの限界といいますか、このニュースは来週号に掲載となります。

 とはいえ、非常に重要なニュースであり、榎木が個人で書いているnoteに速報的に記事を書いています。東大が継続審査になったことを中心に書いています。

 noteは軽めに書いており、ちょっとエンタメ要素があるのですが、この卓越大選定があたかも内申点を重視する公立高校入試みたいなと思った次第です。

 有料部分でさらに考察したいと思います。

2) 研究開発、最大50%税控除(AIなど先端分野)

 補助金よりも広く効く「税制」は、景気や投資判断に直結する一方で、対象の線引き次第で“政策の選別”が強まります。大学発ベンチャーや共同研究にも波及し得るため、定義(先端分野、試験研究費の範囲)と運用の透明性が焦点です。

3) SIP第3期「制度中間評価」WG

 国家プロジェクトは「始める」より「続け方」が難しいものです。中間評価は、成果を伸ばす改善策にも、縮小や統合の根拠にもなります。評価項目に何を置くか(社会実装、波及効果、人材育成など)で、国の優先順位が見えてきます。

4) 科学技術研究調査(総務省統計)24年度の科技研究費23兆円(過去最高)

 統計は“勝敗”を決める道具ではなく、議論の共通言語です。研究費の総額だけでなく、企業・大学・公的機関の内訳、研究者数、分野の構成、伸びの偏りを見てはじめて、現場の体感と接続します。自組織の位置を把握する入口になります。

 「過去最高」という見出しは明るく見えますが、問題は配分と実質です。物価や人件費、固定費が増える局面では、総額が増えても研究者の可処分リソースが増えないことがあります。増えた分がどこへ行ったのか、内訳と地域・分野差が重要です。

5) 文科省、経営悪化私大への指導強化(少子化)

 少子化局面では、大学政策が「拡大」より「整理」に寄ります。指導強化は学生保護の観点では必要ですが、地域の教育・研究基盤をどう維持するかという別の課題も生みます。撤退か再編か、そして再編のコストを誰が負担するのかが争点です。

6) 入試早期化の「抜け道」問題

 制度の穴は、競争環境で拡大しがちです。小論文を課しても配点が形骸化すれば、実態は別ルートの早期確保になります。高校現場の負担増、探究活動の形式化、学力評価の信頼低下など副作用が連鎖します。ルール改定は“目的”の再確認が鍵です。

7) 信州大、軍事研究助成の応募解禁へ(方針転換)

 デュアルニュース研究の扱いは、賛否以前に「意思決定の手続き」が問われます。どの助成を対象にするのか、審査体制はどうするのか、学内の異論をどう扱うのか。透明性が弱いと、後から不信と分断を生みます。研究自由と安全保障の接点を制度で支える必要があります。

8) 東大病院の贈収賄事件(寄付金の「使い勝手」)

 国際卓越大の選定にも影響を与えたと言われる事件。寄付金は研究・診療の柔軟な財源になり得ますが、ルールが曖昧だと不正の温床にもなります。問題は個人の倫理だけでなく、資金の管理・監査・意思決定の設計です。外部資金が増えるほど、ガバナンスの弱さが露呈します。大学病院モデル全体の課題です。

9) 研究公正:bioengineering論文に相次ぐ懸念(Nature)

 疑義の早期発見(画像解析、投稿履歴の追跡など)は、研究の自浄機能の一部になりました。一方で、大学や学会は「疑義が出たときの標準手順」を持たないと、炎上か隠蔽かの二択に追い込まれます。初動の透明性と、当事者保護の両立が難所です。

10) キャリア:博士進学に迷う人へ(名大のイベント)

 博士進学は「好き」だけでも「不安」だけでも決められません。重要なのは、出口の幅(学界、企業、行政)、経済条件(奨学金、雇用)、研究環境(指導体制)を具体に把握することです。そのうえで、自分の動機を言語化できるかが、進学後の折れにくさを左右します。

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