東大は「赤字」なのか——否定された報道と、否定されなかったもの

東大の赤字と研究者削減を報じた日経に対し、大学も文科省も「削減を検討している事実はない」と否定しました。会計上の赤字が資金不足を意味しないのも事実です。ただ、否定されたのは「決定」であって「事実」ではありません。研究者の減り方は、決定ではなく更新されない任期という形で静かに進んでいきます。
榎木英介(カセイケン代表) 2026.08.16
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 二〇二六年七月三十一日、日本経済新聞が「東大さえ赤字、足かせ多く稼げぬ国立大学法人」と報じました。続いて八月八日の朝刊には「東大が2年連続赤字へ 『貯金』数年で枯渇、研究者の削減不可避」という見出しが並びます。

 日本の大学の代名詞が、資金繰りに詰まって研究者を減らす——衝撃的な話です。

 ところが、当事者は揃ってこれを否定しました。東京大学は八月七日、「本学において、研究者数の削減を検討している事実はなく、そのような方針や計画を決定した事実もありません」と公表します。

 八月十二日には文部科学省も見解を出し、損益計算書上の赤字は直ちに資金不足を意味しない、東大が資金ショートしている状況ではないと説明しました。

 報道の危機感と、当事者の否定。この落差をどう読めばよいのでしょうか。

 結論から申し上げると、私は両方とも嘘をついていないと考えています。そして、だからこそ厄介だと思うのです。否定された「研究者削減」は、そもそも誰かが決定する形では起きません。それは、更新されない任期という形で、静かに進むものだからです。

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