「8.7兆円」に沸く前に――概算要求シーズンの歩き方

文科省が過去最大8.7兆円を要求、科研費は倍増、運営費交付金は1.2兆円。心躍る見出しが並びますが、これは予選を勝ち抜いた段階にすぎません。今年は上限なしの「強く豊かな日本」投資枠という異例の仕掛けもあります。数字のからくりと、9月からの4か月で私たちに何ができるかを整理します。
榎木英介(カセイケン代表) 2026.08.23
サポートメンバー限定

 本記事は、毎週発行しているメールマガジンで収集したニュースを中心に、科学技術政策関連ニュースを解説します。毎週日曜日に発行予定です。今回は先ごろ閣議決定された第7期科学技術・イノベーション基本計画について深掘りします。

 メールマガジンの購読は以下から。

 メールマガジンに掲載した多数の記事から、一部の記事を厳選し、以下に掲載しています。

***

 毎年8月の下旬になると、私のXのタイムラインは同じ色に染まります。

 正直に書きます。私はこういう見出しを見ると、つい浮き足立ちます。長く「研究者が食えない」「大学が痩せていく」という話ばかり書いてきた身としては、数字が上を向いているというだけで、少し救われた気持ちになるのです。

 しかし、浮き足立ったまま9月を迎えて、12月に「あれ、あの話はどこへ行った」と肩を落とす。この繰り返しを、私は何度も見てきました。

 概算要求とは、各省庁が来年度の予算の使い道を財務省に提案する、いわば「予選トーナメント」です。決勝は12月下旬の政府予算案の閣議決定であり、優勝が確定するのは翌年3月末の国会成立。8月末の報道は、予選の組み合わせ表が出た段階にすぎません

 しかも今年は、例年とかなり様子が違います。各省庁の要求総額は初めて130兆円を超える見通しで、その主因は上限を設けない新しい投資枠です。数字が大きいことと、政策が前に進むことは、必ずしも同じではありません

 ここから先は、(1)「8.7兆円」の正体、(2)今年の三つの異例、(3)報道の読み方、(4)2024年の科研費倍増署名がこの2年で何を動かしたのか、そして9月からの働きかけのカレンダーをまとめます。

 なお本稿は、株式会社千正組の解説「第11回:概算要求の読み方‐政策・予算の動きを先取りする‐」(有料記事)を大いに参考にしました。政策に関わる方には必読です。

 本ニュースレターはメールでも配送されます。また有料部分では踏み込んで解説します。まずは無料版から、ぜひご購読ください。

***

この記事はサポートメンバー限定です

続きは、4402文字あります。

下記からメールアドレスを入力し、サポートメンバー登録することで読むことができます

登録する

すでに登録された方はこちら

サポートメンバー限定
東大は「赤字」なのか——否定された報道と、否定されなかったもの
サポートメンバー限定
「実質合意」から「正式署名」へ——ホライズン・ヨーロッパ協定の中身を読...
サポートメンバー限定
「黄金時代」と名づけられた解体——ホワイトハウス科学報告書『Scien...
サポートメンバー限定
「人社系のダウンサイジング」は、いつどこで決まったのか——8か月の経路...
サポートメンバー限定
三つの制度と「812校」——骨太が閣議決定でそっと書き足したもの 案か...
サポートメンバー限定
東京大学の改革は成功するか?
サポートメンバー限定
オフキャンパスという知恵は「毒饅頭」か〜統合イノベーション戦略2026...
サポートメンバー限定
「大幅拡充」と「250校削減」は同居できるのか〜骨太・成長戦略・建議、...