修士に年280万円、博士は大学ファンド頼み――文科省8.7兆円要求の設計図

8月28日、文科省の令和9年度概算要求資料が公表されました。総額8兆7,750億円。前年度予算の1.5倍という数字の中身を開けると、増額の4分の3が「投資枠」であること、科研費「倍増」の半分近くがその枠に乗っていること、そして人材支援の重心が博士から修士へ移っていることが見えてきます。
榎木英介(カセイケン代表) 2026.08.29
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 先週、この場で概算要求の読み方を書きました。

 そのとき、各省庁の要求総額は「初めて130兆円を超える見通し」と書きました。締め切ってみたら、140兆円前後でした。上限を設けない「強く豊かな日本」投資枠と、国債の利払い費の膨張で、4年連続の過去最大です。

 そして8月25日から28日にかけて、文部科学省の資料も公表されました。

 8月に流れた一連の報道――科研費倍増、女性研究者に年5000万円、理系修士に年280万円、教員1人あたり学生数で学部を選別――は、いま思えば観測気球でした。気球はすべて着地しています。ただし、着地点の高さは、報道の見出しから受ける印象とはずいぶん違いました。

 文部科学省の一般会計要求額は8兆7,750億円。令和8年度予算額5兆8,809億円の約1.5倍です。とくに科学技術関係は9,863億円から2兆4,453億円へ、2.5倍近くに膨らみました。

 これは景気のいい話でしょうか。それとも、そう単純ではないのでしょうか。

 資料を通して読んで、私が引っかかったのは三点でした。増額の4分の3が「投資枠」に乗っていること。運営費交付金の増額分がほぼ全部ひも付きで、条件のつかない基盤部分は横ばいに見えること。そして、修士課程の学生には年280万円という手厚い支援を用意しながら、博士課程の生活費支援だけが概算要求の外に置かれていることです。

 以下、科研費、運営費交付金、そして人材の三つを軸に、文科省が何を狙っているのか、それが研究者と大学院生の生活と研究をどう変えうるのかを読み解きます。

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