アカデミアを去る理由の半分は「上司」——ある国際調査が示すもの
はじめに——「上司」が研究人生を左右する
研究者を志して大学院に進んだ若者が、なぜ道半ばで学界を去るのか。その理由として、研究費の不足や雇用の不安定さが語られることは多いものです。しかし、それらと並ぶ、あるいはそれ以上に重い要因が「指導教員との関係」だとしたら、どうでしょうか。
2026年6月1日付のNature誌は、「監督体制の不備が、若手研究者を学界から追い出している」と題する記事を掲載しました。
この記事が紹介しているのは、スペインのバスク自治大学(UPV/EHU)の研究者らが中心となり、65カ国2,604人の若手・元研究者を対象に行った大規模調査です。プレプリントサーバーbioRxivに2026年5月22日に投稿されました。
最初に重要な注意を述べておきます。この論文はプレプリントであり、査読を経ていません。 専門家による検証や修正のプロセスを通過していない「投稿前」の段階の研究です。後述するように調査手法にも限界が指摘されており、数値を確定的な事実として扱うことは避けるべきです。
もう一つ、本稿が正面から扱いたい論点があります。この論文の主語である「supervisor」を、日本語の「指導教員」とそのまま等号で結んでよいのか、という問題です。実はこの一見細かな訳語のずれにこそ、日本の大学院が抱える問題の核心が潜んでいます。
それを踏まえたうえで、今回の記事では、「日本では学生を育てても評価されず、指導のインセンティブが存在しない。だから他国よりも学生がハラスメントを受けやすいのではないか」という仮説を検証していきます。私が常々思っていることです。
以下は有料記事となっています。サポートメンバーとしてご登録いただくと読むことができます。サポートメンバーにならなくても、登録すると記事発行の通知が来ますので、よければよろしくお願いいたします。
