科学と社会の接点を読む〜2026年4月12日版 東京大学の「聖域」に踏み込んだガバナンス改革
——附属病院の本部直轄化が意味するもの
本記事は、毎週発行しているメールマガジンで収集したニュースを中心に、科学技術政策関連ニュースを解説します。毎週日曜日に発行予定です。今回は先ごろ閣議決定された第7期科学技術・イノベーション基本計画について深掘りします。
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2025年11月19日、東京大学医学部附属病院救急救命センターの整形外科准教授(M氏)が医療機器メーカーからの収賄容疑で逮捕されました。続いて2026年1月24日、皮膚科学教室のS教授(当時)が、ソープランドでの接待を含む一年半にわたる収賄を受けていたとして逮捕・起訴されました。
その後の調査では特任准教授ら21人が訓告・注意処分が判明し、5万円の飲食接待を受けた教員もいたことが明らかになっています。
皮膚科学准教授は懲戒解雇されています。
問題の深刻さは、事件そのものよりむしろ大学の対応プロセスにありました。プロセス検証委員会(委員長:山口利昭弁護士)の報告書によれば、東京大学はカンナビ案件の内部通報を2024年9月18日に受けながら、警察の要請を理由に内部調査を事実上停止し、2025年6月にカンナビ案件対応本部を設置するまで長期にわたり調査が止まっていました。事案を把握してから懲戒処分・説明責任を果たすまでに要した期間は約1年4か月に及んでいます。
同委員会はこの対応を「組織の自浄作用と説明責任の放棄」と断じ、「警察による捜査開始を理由として内部調査を停止することは、大学の自治そのものを自ら毀損する危うさをはらんでいる」と指摘しました。加えて、重要な会議体で議事録が作成されていないこと、医学系研究科長が科所長会議でS氏を庇うとも受け取れる発言を行ったにもかかわらず誰も異議を唱えなかったことも問題として挙げられています。
同委員会が明らかにした不適切対応の根本原因は四つです。
第一に大学本部における危機意識の不足、第二に「自らの研究領域さえ脅かされなければ他者の倫理違反に口を出さない」という相互不干渉の文化、第三に重要な意思決定の議事録すら残さないプロセス軽視の姿勢、そして第四に「公務員は誤りを犯さない」という無謬性の思想に起因する想像力の欠如です。
このうち無謬性については、「不正を不正と認めたくない」「不正を犯した者を厳罰に処して排除すれば組織は正常化される」という意識が強く働き、自浄作用に消極的な姿勢をもたらしてきた、と鋭く分析されています。
藤井輝夫総長は4月8日の記者会見で「長年にわたる慣習や価値観が社会と極めて乖離していたこと、危機意識が甚だ欠如していたことを猛省する」と述べ、「無謬性の強い組織文化からの脱却、自浄作用が発揮できる組織への変革に向け不退転の決意」を表明しました。
改革は五本の柱で構成されています。
有料部分では、さらに深く考察します。




