報道解説 — 日本の「ホライズン・ヨーロッパ」参加決定とその意義

12月20日、読売新聞は日本がEUの研究資金枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」に参加することで合意したと報じました。この合意により、日本の研究者はEUと同条件で研究費を獲得し、国際共同研究を主導できるようになります。国内研究費が伸び悩む中、国際連携で研究基盤を補強する戦略的意義は大きいと言えます。本稿ではこの合意の意義、課題について深掘りします。
榎木英介(カセイケン代表) 2025.12.21
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 2025年12月20日、読売新聞は政府関係者の話として、日本がEUの大型研究プロジェクト「ホライズン・ヨーロッパ」に参加することが決定したことを報じました(実質合意したとの表現ですが)。

 これはYahoo!ニュースのトピックスにもなりました。私(榎木)もエキスパートコメントをしました。

 今回は、エキスパートコメントで書ききれなかったこの合意の意義を深掘りします。

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***

 前述のとおり、読売の報道によれば、日本と欧州連合(EU)は、研究・イノベーション枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」への日本の参加に向けた交渉を2025年末までにまとめることで実質合意しました。

 ホライズン・ヨーロッパはEUが主導する世界最大級の研究資金プログラムであり、日本の研究者や企業がEU加盟国と同じ条件で応募し、研究費を直接受け取れるようになる可能性を開きます。

 ホライズン・ヨーロッパはEU加盟国以外の準参加(アソシエイト加盟)も認めており、欧州圏以外では韓国、カナダ、イスラエル、ニュージーランドがアソシエイト加盟国として名を連ねています。韓国は今年アジアの国としては初めてアソシエイト加盟しました。

 日本政府とEUの交渉は2024年11月末から始まっています。

 2025年10月に京都で行われた国際会議STSフォーラムでは、EU側の研究・イノベーション担当欧州委員と日本の閣僚(城内実科学技術担当大臣)が政治的意思を共有し、交渉完了の年内目標を確認しました。

 ホライズン・ヨーロッパは、気候変動、デジタル化、エネルギー、健康などの分野を支援する枠組みで、日本がアソシエイト加盟すれば、国際共同研究の機会が飛躍的に広がります。これまでEUとの科学技術協力は長年の積み重ねの上にあり、今回の動きはその延長線上にあります。

 有料部分では、さらに深掘りしていきます。

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