「京都」の名を冠したワシントンの言葉――17カ国が支持した「科学の黄金時代に向けた京都ビジョン」を読む
本記事は、毎週発行しているメールマガジンで収集したニュースを中心に、科学技術政策関連ニュースを解説します。毎週末ごろに発行予定です。
メールマガジンの購読は以下から。
メールマガジンに掲載した多数の記事から、一部の記事を厳選し、以下に掲載しています。
京都で採択された、ワシントンの言葉
10月4日、国立京都国際会館。毎年10月に京都で開かれる「科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(STSフォーラム)」の第23回年次総会が始まりました。今年のテーマは「科学技術・社会における地殻変動への舵取り」です。
なお、このSTSフォーラムですが、故尾身幸次氏が始めたもので、「尾身さんのSTS」と呼ばれることもあります(有料部分でもう少し詳しく触れます)。STSは科学技術社会論の略称でもあるので。なお、STSの分野で著名な研究者が、最近東大総長に選ばれた藤垣裕子教授です。
それはさておき、STSフォーラムの初日、ホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)のマイケル・クラツィオス局長が、ある共同宣言を発表しました。「Kyoto Vision for a Golden Age of Science(科学の黄金時代に向けた京都ビジョン)」。米国を含む17カ国が支持し、日本もそこに名を連ねています。
「黄金時代」という言葉に、聞き覚えのある方もいるでしょう。7月にクラツィオス氏がトランプ大統領に提出した報告書『Science: A New Golden Age』のことです。私はこの報告書をtheLetterで詳しく読み、診断には頷けるところがあるが、処方箋はそのまま真似できない、と書きました。
京都ビジョンは、その報告書の「国際版」と言ってよい文書です。
最初に、ひとつ整理をしておきます。この宣言は、G20の閣僚会合で採択されたものではありません。今年のG20議長国は米国で、G20イノベーション担当閣僚会合は9月1〜2日に米ノースカロライナ州チャペルヒルで開かれ、そちらはそちらで合意声明を出しています。
京都ビジョンは、STSフォーラムに合わせて集まった科学技術担当閣僚のうち、賛同した国だけが名を連ねた文書です。宣言の本文も、閣僚たちがSTSフォーラム年次総会に「あわせて」京都で会合した、と書いています。つまり、全会一致を前提とするG20とは違う、いわば「有志連合」の文書なのです。この違いが、後で効いてきます。
1ページに書かれていること
宣言の本文は、A4で1ページしかありません。全文はホワイトハウスのサイトで読めます。
https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2026/10/Kyoto-Vision-for-a-Golden-Age-of-Science.pdf
柱は三つです。
発見の制度を改善する:長期助成、迅速な助成、賞金・チャレンジ型など多様な資金配分の仕組みを組み合わせ、新しい研究組織のモデルを試す。メタサイエンス(科学のやり方そのものを実証的に研究する分野)を歓迎し、政府内に専門の機能を置く価値に言及する。
科学のための超知能(SI)を活用する:研究の自動化や、閉ループ型の自律的な発見を進め、計算資源、データ、実験施設へのアクセスを広げる。
科学を担う人材を育てる:優秀な学生・若手研究者に早期に投資し、装置を操作・保守・改良できる技術人材の実地経験も広げる。
トランプ大統領が推すSIが出てきていますが(この件は有料部分で触れます)、一読すると、反対しようのない、穏当な内容に見えます。私も、研究者の事務負担を減らすこと、再現性を重んじること、否定的な結果(ネガティブデータ)を価値ある貢献と認めることには、心から賛成します。
しかし、この種の文書は、書かれていることよりも、「どの動詞で書かれているか」「誰が署名し、誰がしなかったか」を読むと、まったく違う姿を見せます。
有料部分では、宣言の動詞と「超知能」という言葉の出自、17カ国の顔ぶれとそれぞれの思惑、署名しなかった国々、そして日本の科学技術政策にとってこの宣言が何を意味するのかを、順に見ていきます。
ここから先は有料部分です。「誓った」と「努める」のあいだにある距離、17カ国を五つの群に分けて読む各国の思惑、フランスやカナダ、中国、インド、EUの不在が意味すること、そして日本がこの宣言で何を引き受けたのかを書いています。
本ニュースレターはメールでも配送されます。また有料部分では毎回踏み込んで解説しています。まずは無料版から、ぜひご購読ください。





